【無料】帝京大学創立50周年記念 帝京大学法学会主催国際シンポジウム

スタートラインのビジネスマン

【テーマ】 「欧州の知的財産法―その向かうところ」

帝京大学法学会は、フランスから4名の専門家をお招きしてシンポジウムを開催いたします。皆様奮ってご参加いただければと存じます(日⇔仏同時通訳がつきます)。
http://tufla.org/

【開催日時】2016年6月6日(月)(開場16:00) 
シンポジウム16:30-18:30
懇親会19:00-20:30

【場所】帝京大学八王子キャンパスソラティオスクエアB2小ホール
【参加費】無料   
【定員】250名(定員になり次第締め切ります)
【主催】帝京大学法学会

【内容】
開会の辞(16:30-16:35) 
帝京大学法学部長 北見 良嗣

第一部:講演
1.欧州統一特許と欧州統一特許裁判所: 欧州各国法の「寄せ鍋」から何が望めるのか(16:35-17:10)
Patrick TRABÉ Bandpay & Greuter共同パートナー、欧州弁理士
Aujain EGHBALI Bandpay & Greuter共同パートナー、欧州弁理士、修士(民法学)
質疑応答(17:10-17:15)

2.欧州商標法改革: 商標権者に与える結果(17:15-17:35)
Yann BASIRE Ph.D Haute-Alsace大学准教授、ストラスブール大学知的財産研究所講師、ストラスブール大学知的財産研究所研究員、欧州連合知的財産庁顧問、博士(法学)
質疑応答(17:35-17:40)

3.欧州連合における著作者人格権の特徴(17:40-18:00)
Pauline DARNAND Juris-dialogパートナー弁護士、ストラスブール大学知的財産研究所講師
質疑応答(18:00-18:05)

第二部:パネルディスカッション
「いま欧州と日本が直面している知的財産関連問題(18:05-18:25)」
パネリスト : Patrick TRABÉ  Bandpay & Greuter共同パートナー、欧州弁理士
Aujain EGHBALI  Bandpay & Greuter共同パートナー、欧州弁理士、修士(民法学)
Yann BASIRE, Ph.D.  Haute-Alsace大学准教授、ストラスブール大学知的財産研究所講師、博士(法学)
Pauline DARNAND  Juris-dialogパートナー弁護士、ストラスブール大学知的財産研究所講師
コーディネーター: Miyuki TSUYUKI, Ph.D.  帝京大学法学部准教授、博士(法学)

閉会の辞(18:25-18:30)
帝京大学法学部長 北見 良嗣

【お問い合わせ先】帝京大学法学部 露木 美幸 mtsuyuki@main.teikyo-u.ac.jp / 042-678-3446(研究室直通)
【参加申込】
参加を希望される方は下記のサイトより必要事項を入力してください
http://goo.gl/forms/ECDAfVLnud

【主催】帝京大学法学会

ハイスコアガール事件が和解で決着

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手ゲームソフト会社スクウェア・エニックスが取り扱う漫画「ハイスコアガール」。作品内でゲームキャラクターを無断使用しているとしてSNKプレイモアとの間で生じていた注目の紛争が、このほど和解により解決した。

SNKプレイモアは昨年5月、スクエニ側を、著作権法違反を理由に大阪府警へ刑事告訴。11月には作者の押切蓮介氏他16名の関係者が大阪地検に書類送検されていた。両社は別途民事訴訟でも争っていたが、この8月26日、(1)SNKプレイモアによる上記刑事告訴の取り消し、(2)双方の民事訴訟の各々取り下げ、(3)スクエニによる「ハイスコアガール」の出版及び販売継続の容認、を骨子とする和解が成立したと報道発表された。これを受け、大阪地検特捜部は、28日、本件を不起訴処分とした。また、「ハイスコアガール」について、スクエニ側として早期再開を目指すとし、押切氏も自己のブログ等でその意欲を示しているとのこと。作品性が高いと評される「ハイスコアガール」のファンも大変喜んでいるという。

こうして事件は当事者合意によって円満解決したが、刑事面では現行著作権法が親告罪としていることもポイントであったといえる。ご存じのようにTPP交渉では我が国に対し著作権上の非親告罪化が求められており、未だ決着していない。もし非親告罪となれば、告訴が取り消されても、告訴権者の意思と関係なく、検察官は公訴提起すべきと考えればこれができるし、裁判所も当事者の和解状況など情状を酌むとしても、有罪判決を下すことは可能だ。典型的かつ悪質なデッドコピー侵害のごとき場合は別として、著作権に関する紛争は、複雑な事情が絡み、判断も賛否両論、微妙なものが多いので、刑事における非親告罪化に対しては、今後とも慎重な議論を望みたい。

さて、本件については、明治大学・知的財産法政策研究所が「著作権・表現の自由・刑事罰」と題して3月24日にシンポジウムを開催し、資料・議事録等を同研究所のホームページに公表しているのでご案内しておく。私も参加したが、大変深堀された内容となっていて、この分野にご興味のある方々には参考になるだろう。

http://www.kisc.meiji.ac.jp/~ip/archive.html

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

アップル社にまたもや商標権の壁?~Apple Watchがスイスで販売できない~

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数の報道機関の記事によると、鳴り物入りで登場した「Apple Watch」が、スイスでは先行する特許権の問題で販売開始ができない状況と伝えている。

この特許権だが、1985年12月5日に成立。権利者はスイスの高級時計メーカー「レオナール」で、それによりアップルはApple Watchについて、いわゆるリンゴの図案や「APPLE」の語を使用できない。
ただし、特許権は今年の12月5日に切れるのでその後は販売開始可能、というのがその概要だ。

だが、それら記事にはどうもしっくりこない点がいくつかある。
たとえば特許の有効期間。仮に1985年12月5日を特許出願日とするなら、およそ30年近くが経過することになる。
1995年改正の現行スイス特許法では権利期間は出願から20年、旧法の確認はできていないが、おそらく同様であろうと考えれば、既に権利は失効しているはずだ。
また特許の存在により、リンゴの図案や「APPLE」の語を使用できないとは、どうにも権利内容について想像がつかない。

ということで、どうもこの件は特許ではなく、商標に関するもののようだ。
そうとすれば、上掲のリンゴを真ん中で上下2つに切り分け、これに挟まれるように「APPLE」の語を付した商標をレオナールはスイスで登録している模様だから合点がいく。

ちなみにこの登録商標、第07450/1985号として1985年12月5日に登録(出願)され、10年毎の更新を繰り返していれば、今年の12月5日まで有効だ。もっとも記事で何故、この日を経過すればアップルがApple Watchを販売可能(「Apple Watch」商標を問題なく使える)としているのかはよく分からない。

現行スイス商標法によれば、更新手続きは期間満了1年前から、満了後も6ケ月経過までは行なえる。また、レオナールが当該登録商標を継続して5年間不使用な場合は、もはや権利主張できないとする「不使用に対する効果」をスイス商標法は規定しており、アップル側は既にその手続きに入っているのかもしれないが、12月5日という日付自体は関係がない。

いずれにせよ、記事は速報状態で配信されたようで、やや正確性を欠いている模様だ。
今後、専門家による分析を加えた正しい続報に期待したいところである。ちなみにスイスでは、iPadやiPhone用の時計アプリに対し、スイス連邦鉄道からそのデザインについてクレームを受け、約17億円をアップルが支払い和解したケースがあった (http://ipnews.jp/2012/11/16/sbb-clock-app/)。また「iPad」商標をめぐり、中国企業に6千万ドルを和解金として支払った事件も有名だが、アップルとして今回もこうした巨額の金銭的解決を目指すのかどうか注目される。

それにしてもApple Watch、当初は「iWatch」のネーミングを計画したところ、欧州で「iSwatch」やズバリ「iWatch」の既登録商標があり断念。結果としてApple Watchになったという経緯をよく耳にするが、「Apple Watchよ、お前もか」の状況。なかなか上手くはいかないものである。

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

模倣品被害にあわないために~悪質な仮想店舗に注意を~

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頃、特許庁より「2014年度模倣被害調査報告書 調査分析結果の概要」が発表された。2014 年 8 月から11 月にかけて、日本企業・団体約8,000社に対し模倣被害に関する アンケート調査を行なった結果であり、2013 年 4 月~2014 年 3 月間の模倣被害の状況を示すものである。

このなかで特に目を引いたのは「インターネットによる模倣被害動向」だ。
インターネット上の模倣被害とは、インターネット通販サイトやオークションサイトを使った模倣品の販売取引、インターネッ トにおけるコンテンツ等の著作物の違法コピーなどを指すもので、2009年度に被害ありと答えた企業等はおよそ50%だったが、この5年の間に60%を超えるまでになった。

インターネット通販サイトなどでの模倣被害は、実店舗でのそれと、やや状況が異なるものと考える。
かつて、繁華街や大きな駅前広場などでゲリラ的にワゴンを並べ、ブランド品(?)のバッグや財布他を販売する業者をよく目にしたものだった。どう考えても、こんなところで、しかも屋台で、グッチやフェンディなどの有名ブランド品が販売されるはずはなく、しかも値段がゼロ2つ分ほども安かったから、購入客はそれらを明らかに模倣品と認識して買っていた。
無論、有名ブランド企業側にとっては許しがたきフリーライド行為であり、被害は甚大なものの、極論すれば客には被害が及んでいない状態であった。実店舗でも、店構えや店員の態度から、容易に胡散臭さが感じとれるもので、「本物が欲しい」人たちは自衛手段がとれるわけだ。

他方、ネット通販ではどうか。
ディスプレー上の仮想店舗は、いくらでも美しく飾ることができる。「場所柄」という概念もない。大事なお金を払う相手だからこその、動物的勘ともいえる「胡散臭さ」をかぎ取る嗅覚が活かされにくい。さらに購入前、手に取ってみることが不可能だ。画面上は本物の商品写真を載せ、送ってくる物は偽物という例や、包装箱だけが本物(回収して使いまわす)という例もあるという。価格も極端な安売りにはせず、「お得感」を感じるような値付けにして、本物っぽさをも演出するという巧妙な手口を使っていることも。

最近話題になった“Ergobaby”の抱っこ紐の場合も、通販サイトでの購入で偽物を掴まされたケースが多いと聞く。模倣品には、ウエストベルトが緩んでしまい、前かがみになると赤ちゃんが落下してしまうという安全上ゆゆしき問題のあるものが多々あるようで事態は深刻だ。

このように、上掲の実店舗の場合と比べて、当該ブランド企業とともに購入客も模倣被害を受けることが多いのが、インターネットによる模倣被害の特徴といえる。また、ブランド企業にとって痛手となるのは、いったん偽物で被害を受けた客は、これに懲りて、以後、そのブランドの商品を(正規品であるにもかかわらず)敬遠する傾向が強いことだろう。

ディスプレイ上の仮想店舗がいかによい出来であっても、支払方法などの細部を見ていくと胡散臭さは見て取れるという。簡易にネット取引が出来る時代を迎え、消費者は自己の「動物的勘」を今一度磨き直す必要がある。勿論、ブランド企業側にあっては、これまで以上にネット取引を監視するとともに、行政・司法を含めた官民あげての模倣品排除の施策と行動が求められる。

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

国際標準化における必須特許をめぐる対立~混迷を深める「あるべきパテントポリシー」の姿~

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代の国際標準化にとって、切っても切れない関係にあるのが標準必須特許の取扱いだ。
かつては標準化作業に際して関連する特許が生まれた場合、当該標準規格策定者たる特許権者は、その標準規格を使用する製品に対しては、特許権の主張を控えたり、まれにどうしても権利主張を求める特許権者がいたときは、その部分について規格標準化を見合せたりといった措置がとられていた。

今日では、必須特許に関わる標準規格を利用する者に対し、公平・非差別的、かつ合理的な額での特許実施料によるライセンスを付与することとし、標準化を完遂させるのが一般的だ。
このようなライセンスをFRAND(またはRAND; Fair, Reasonable and Non-discriminatory)条件と称している。

ISO、IEC、ITUなどの国際標準化機関は、標準規格策定参加者に対し、必須特許に関する宣言書の提出を要求している。
宣言書の内容は、大まかに言えば、タイプ1として「標準必須特許の無償許諾」、タイプ2に上掲のFRAND条件での許諾、タイプ3に「許諾しない」(従って、その部分は標準化されない)と項目が別れていて、それぞれひとつにチェックを入れ宣言させる形式だ。
こうした必須特許の取扱いに対する指針を「パテントポリシー」と呼んでいる。通常、参加者はタイプ2を選択する。
これにより、必須特許の存在が規格標準策定の妨げとならず、かつ、当該標準化のため先行開発投資を行なってきた中心的な参加者達も、必須特許実施料を得ることでその費用回収をはかり、規格を利用するだけの者(よって先行開発投資をしていない)との不公平を解消することを目的とした。

ところが、この「パテントポリシー」、特に近年では機能不全が著しい。
アップル、サムソン、モトローラ、マイクロソフトなど名だたる巨大企業間で標準必須特許を巡る差止訴訟が世界各地で勃発している。
事業構造の変化で不要になった企業の保有必須特許を買い漁り、強引に法外な実施料を吹っ掛けるPAE (Patent Assertion Entity)の横行や、クァルコムなどのように、必須特許実施料請求の内容が競争法当局から不公正取引であるとして是正を求められるケースも増している。

なぜか。
パテントポリシーで謳う「公平・非差別・合理的」といった文言自体に具体的かつ統一した解釈が存在しないのが最大の原因だ。

本来、適正な実施料が支払われる限り、標準必須特許による差止は行われないはずだが、何が適正か明確にならなければ、その料率が高いか安いかを巡って、やはり差止訴訟や競争法違反に関する行政当局審理が頻発する。宣言書の効力も問題だ。

前掲PAEの例のように、特許権が移転した場合、その移転先をも拘束できるのか。ISO/IEC/ITUのパテントポリシーには、参加者に対し移転に関する一定の義務が盛り込まれているものの、移転先(さらには再移転先)を完全に拘束できる内容になっているとは言い難い。訴訟になれば、裁判所が個別に判断するしかない状況だ。
国際標準化機関が「特許問題は、当事者間の話」と腰を引いてきたことも混迷を深めさせた理由の一つだろう。

こうした事態に業を煮やしたか、欧州競争法当局は、スマホや携帯電話など規格標準化がまさに必須な分野を扱うITUに圧力をかけた。
これを受け、ITUは重い腰をあげ、2012年10月より差止や合理的な実施料の考え方、特許移転時の取扱いなどへの具体的・統一解釈に向けた議論を始めた。これまでに開催された全体会議やアドホック会議はすでに16回を数える。
だが、今のところコンセンサスを得たのは「移転」についてだけのようだ(再移転を含めFRAND条件での許諾を拘束)。議論に7~8割を費やしたといわれる「差止」に関しては、先行開発投資や標準策定作業に対し十分な経費回収をはかりたい権利者側(いわゆるクァルコム・ノキア等陣営)と、できるだけ実施料を安く抑えたい規格利用者側(アップル陣営)が鋭く対立していて出口が見えない状態という。

そもそも実施料率の「合理性」についての統一解釈が進まなければ、こちらの解釈も進めようがないのも折り合いがつかない理由だろう。この他、ITUでは、昨年より新たな課題として標準必須特許の「質」に関しての議論が加わった。そもそも特許宣言をするに際し、それが必須であるかどうかは自己申告制で、パテントプール参加時のような第三者による必須認定を受けているわけではない。本当に標準必須特許といえるのか曖昧なのが実情だ。

さらに、宣言された特許に無効原因があるかどうかも現状では分からない。スマホ一台に対し数万件といわれる標準必須特許だが、本当は(非必須や無効で)そんなにないのでは、ともいわれている。こちらについては、専門機関たる主要国特許庁の協力を得ながらの対応を模索中だ。

標準必須特許の問題とは、端的にいえば「お金」の問題だ。特許実施料分が標準規格を実装した製品にオンされれば、当然価格は高くなる。必須特許の存在で、消費者にとって手の届かないような高額商品になってしまったら、そんなものは普及しない。

他方、多大な経費をかけて技術開発し、標準化を果たした規格策定参加者が、必要にして十分な実施料収入を得られないならば、規格策定に参加する意味がなくなり、標準化自体が衰退する。二律背反の、誠にドロドロとした世界でもあり、簡単に着地点が見つかる話でないことは良く分かる。
ただ、ITUによる議論は、今年6月のアドホック会議で最後になるが、「“移転”を除けば何も決まらなかったと」いう最悪の結末だけは何とか避けて欲しいと思う。

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

年初からビッグニュース! トヨタ、燃料電池車関連特許を無償で実施権許諾

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2015年、知財関連として今年最初の大型ニュースは、このトヨタの話題であろう。

同社では、FCV(Fuel Cell Vehicle; 燃料電池自動車)に関する燃料電池スタック(水素と空気中の酸素から化学反応により電気をつくる発電装置)、高圧水素タンクおよび燃料電池システム制御技術や、水素ステーション関連技術についての特許を全世界で約5,600件所有する(注:一部審査中を含む)という。

今後FCVを普及させるにあたり、開発を進める他の自動車メーカーや水素ステーション整備等を行なうエネルギー関連企業との協調は不可欠と判断、その一環して提案するものと説明されている。

これまで「技術は囲い込むもの」としてきた自動車業界にあって、IT産業のごとく市場規模拡大のため技術のオープン化に踏み込んだトヨタの英断に、自工会など歓迎の意を示している。

もっとも、トヨタとして、むやみやたらと特許を無償で使って貰おうということでは当然ない。

前掲の燃料電池スタック・高圧水素タンク・システム制御に関する特許は、車両に使われるもの。ここはトヨタとしての「主戦場」だ。

当該特許の無償実施期間は初期導入期としての2020年末までに設定されている。それ以降は有償とする可能性もある。

とあるシンクタンクの予測だと、2020年におけるFCVの普及率は、自動車全体として1%程度とみられている。もともと当該時点までは、さしたる特許料収入は見込めないわけだ。

ただ、仮に2020年以降、特許実施が有償化されるとしても、トヨタがいきなり法外な特許料を請求するとは思えない。そんなことをしたら、それまでの普及促進策が水の泡になる。

他社による導入期に、各種特許のオープン化を通じて「トヨタ方式」による技術を定着させ標準化領域を主導的に創り込むとともに、部品の共通化などでコスト削減を目指す。ちなみに標準化はコストを稼ぐもの、利益を稼ぐのは「差別化」だ。むろん、トヨタとして利益を稼ぐ差別化技術についてはクローズドにするはずだ。

普及に水を差さない程度に特許料収入をも得ながら、クローズドの技術で他社製品との差別化を図るデファクト標準化で、FCV分野の主導権を握る戦略が垣間見られる。

他方、水素ステーション関連特許約70件については、期限を定めず無償実施許諾の方向だとしている。こちらはトヨタにとって「主戦場」ではないインフラ整備の分野だから、それで構わないのだろう。

ブラウザの利用者確保(広告料収入獲得)という主戦場のため、グーグルが無償提供するスマホ・タブレットのOS「アンドロイド」と同じ発想だ(注:もっともこちらは特許まで無償というわけではないが)。

とにかくFCV普及のためには、より多くの水素ステーションが必要であり、そのための先行投資といえるだろう。さらにこちらも「トヨタ方式」の標準化として、水素供給を受けるFCV側との親和性の高さも期待できるかもしれない。

ところで本件、一部の報道では、「トヨタの特許無償開放を称賛」とし、逆に特許が産業の普及発展に対する壁となっているがごとき印象を与えていて、少々違和感を覚える。

特許の本質はあくまで「独占権」だ。そして独占権であるからこそ、オープン化という選択肢が得られるわけだし、差別化すべき部分をクローズトにできるというシナリオが描けるのだ。この本質部分は見誤ってはいけない。

FCVは、日本が将来目指すべき「水素社会」の切り札であり、デファクト標準化を主導的に行える数少ない技術分野だ。この独占権たる特許を巧みに使い、国益にかなう普及促進に努めて頂きたい。

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

“Made in PRC”ってどこの国? ~今どきの原産国表示事情~

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“Made in …”という原産国表示。厳密にいえば知的財産権ではない。たとえば我が国商標法では、その出願された商標が商品の産地などを示すに過ぎないものである場合には、商標登録が出来ず(商標法3条1項3号)、権利化はされない。

ただ、取引の現場では、(近年では少々その威光が弱まっているとはいえ)相変わらず“Made in Japan”の「ブランド力」は強い。海外に出張に行く際、手土産に持って行く物は出来るだけこの“Made in Japan”あるいは“日本製”の原産国表示付きにしている。実際、喜ばれるのだ。まだまだ高品質イメージは健在で、そんなとき、我が“ジャパン・ブランド”を誇らしく感じるものだ。

他方、その原産国であることを嫌う消費者がいるため、国名として良く分からない表示方法に変えるケースがあるという。それが“Made in PRC”だ。“PRC”とは、”People’s Republic of China”、即ち中国のことである。

すべての製品がそうというわけでは当然ないが、中国からの輸入品の安全性や品質管理に疑問を投げかける日々の報道に嫌気して、我が国の消費者には中国原産品をすべからく敬遠する向きも多い。こうした状況が“Made in China”から“Made in PRC”へと表示変更を誘発している原因だという。実際、中国製であることが分からないまま購入されるケースも増えているようだ。

原産国表示を規制する法律は、景表法、関税法、不正競争防止法などがある。特に景表法は主たる規制法だ。
ただ、それぞれの法律ともに規制の対象は「虚偽・不当表示」である。一般的には“China”のほうが“PRC”より認知されているとはいえ、より正式な国名である中華人民共和国の英文頭文字略称である“PRC”が、虚偽や不当な表示とまでいえるかどうかは、かなり判断の別れるところだろう。

ちなみに食品に関してはJAS法のもと原産国表示は厳しく規制されており、たとえば米国産のものであれば、日本語で「米国」、「アメリカ」、「アメリカ合衆国」などと理解しやすいように表記せねばならないとして、“USA”や“US”の使用は認めていない。当然“PRC”も認められないはずだ。
同様の規制を他の製品にも広められれば良いが、原産国表示に関しては業界ごとに慣行や影響度などが異なる模様であり、仮にできたとしても、相当の時間を要するだろう。

対消費者への「目くらまし」の意図も少なからず感じるこの“Made in PRC”表示。これに限らずだが、もし何等か表示内容に疑問があったら、購入前にその意味するところをきちんとお店の人や販売元等に確認するなど、自衛する必要がある。

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

11月11日は何の日? ~ “ベストアイドルドッグ2014”にニッパー君認定 ~

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11月11日は「イイワンワン」の日。

ホリプロアイドルドッグ.JP(http://www.idoldog.jp/)では、この日を「アイドルドッグの日」と定め、多くの人達に愛され、親しまれてきたワンちゃんを「ベストアイドルドッグ」に認定してきました。2009年、初代認定「忠犬ハチ公」から数えて第6回目の今年は、ビクターの犬のマークで知られる「ニッパー君」が“ベストアイドルドッグ2014”に選ばれました。

ニッパー君といえば、ちょっと首をかしげた陶器の置物で有名ですが、実在したフォックステリア犬で今年生誕130年を迎えたそうです。
その感動秘話はこちら。
http://ipnews.jp/2013/06/24/victor-jvc/

英国では1900年に、日本でも1905(明治38)年に登録され、使用が続けられている現役の商標でもあるニッパー君。世界中にファンも多く、時折、フェイスブックなどで“可愛いの見つけた!”と、写真入りで大盛り上がりを見せています。
もうこれは時代を超えた愛すべき文化財。
大切にして欲しいですね。

【11月5日〜7日】特許・情報フェア&コンファレンス2014【東京】

日刊知財新聞

特許・情報フェア&コンファレンス2014

最新の特許・情報と知的財産関連の新製品・新技術情報を一堂に網羅する、我が国最大の専門見本市を絶好のビジネスチャンスとしてご活用ください。

【日時】2014年11月5日(水)〜7日(金)
10:00〜17:00
【入場料】1,000円(税込)無料招待券はこちら http://www.pifc.jp/invitation.html
【場所】科学技術館(東京・北の丸公園)東京都千代田区北の丸公園2-1
【主催】
一般社団法人発明推進協会 一般財団法人日本特許情報機構
フジサンケイビジネスアイ 産経新聞社
【後援】
経済産業省 特許庁 独立行政法人工業所有権情報・研修館 
日本商工会議所
【併催】
コンファレンス/企業プレゼンテーション
【詳細】http://www.pifc.jp/index.html

Best Global Brands 2014、今年もAppleが首位 ~ 今こそブランド価値経営で好感度ブランド企業を目指せ ~

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国を本拠地とする世界最大のブランドコンサルティング会社、インターブランド社による今年の世界ブランドランキングが発表された。


ISO 10688として公に認められたブランド価値評価手法を用いた2014年度のランキングでは、昨年に引き続きAppleとGoogleが1位・2位を占めている。
ただそれらのブランド価値は現状にとどまっているわけではなく、いずれも対前年比で15%~20%あまり上昇しており、それぞれ金額換算すると初の1千億ドル超えを達成したという。
また、ITメーカーHuaweiが中国企業として初のトップ100入りを果たした(94位)ことも注目されている。


日本企業では昨年の10位から8位にランクを上げたトヨタが善戦している。
自動車メーカー分野としてはこの十年来、メルセデス・ベンツやBMWなどをおさえ、常に1位だ。プリウスをはじめ世界最先端の環境技術力を継続的に世に発信してきたことが、トヨタ・ブランドの更なる価値向上をけん引しているのだろう。


ただ、ベストテンにランクされた日本企業は、このトヨタだけ。
家電では、52位のソニー、64位のパナソニックがかろうじて100位圏内にいるが、昨年8位から7位に順位を上げたSamsungに大きく水をあけられた格好だ。
その他100位圏内の日本企業はホンダやニッサン、キャノン、ニンテンドーなど、ほんの数社にとどまっているのが残念なところだ。
まだまだ日本企業においては、ブランド価値経営の実践、道半ばということだろうか。


仕事柄(といってもマーケティングが専門ではないが)、「ブランド価値経営とは何か」と良く訊かれる。ブランディングに関する書籍などで様々に説明されているが、そんなとき、私は一言でこう答えている。

「のれんを大事に商いすること」です。

真に、のれんを大事に商いを続ければ、おのずとブランド力は高まっていく。
同じ値段なら、人は知らないブランドのものよりも、名の知れたブランド品を手にする。
名の知れたブランド同士なら、人は好きなほうのブランド品を買う。そして人は好きなブランドなら、少々値がはってもそちらを買う。


好きなブランド、好感度抜群のブランドになれば、価格競争を主戦場にする必要がなくなる。しっかりとした利益体質の、永続性が見込める企業となり、ブランドはその源泉として企業資産としての価値もあがっていくわけだ。
今やヒト・モノ・カネ・情報に続く第五の経営資源としてブランドがあげられるゆえんである。


無論、日本企業とて、のれんを大事に商いをしてこなかったわけではないだろう。世界の中で、これほど著名なブランドを有する企業群のある国もめずらしいといえる。


ただ、著名になることと、好きになってもらうことは少々趣を異にする。
毎年、このインターブランド社のブランドランキング、特に上位陣を見て思うのは、それらが著名性を超えたブランドの好感度や発信力を備えた企業たちであることだ。


のれんを大事にする、とは積極的に自社のブランドを意識し、その価値をあげるため、どんな商い方をするべきか、経営トップから末端の社員に至るまで真剣に考え、そこで出た最適解に向け、こつこつと実践することに尽きる。


たとえば企業経営の重要な要素のひとつたる「コンプライアンス」(これも良く訊かれるが、私は「後ろ指さされぬ経営」と答えている)。
何故、これを守るかと言えば、のれんを守りたいからだ(逆にいえば、コンプライアンスの意識に欠けている企業は多数の不祥事が発生し、のれんは壊滅的なダメージを受けることになる)。


そしてこれを最適に守り抜くことにより、世の中に「あの会社はしっかりしている」という信頼感を醸成し、その信頼感が化体することによってブランドの好感度が向上、ブランド価値もより高まっていくことになる。


知財面でもそうだ。模倣品を野放しにしないこともまた、ブランド価値向上に繋がる。ニセブランドなどの模倣品が蔓延すれば、当然、正規品の売り上げに悪影響を及ぼす。
更に低品質の模倣品であるがゆえ、顧客の身体や財産を傷つけることになったら事態は深刻だ。
薬品や食品などは、直接顧客の健康等に悪影響する。家電の分野でも感電や発火などを引き起こす、危険な模倣品が多い。それらの被害を受けた人々は、正規品であってもそのブランドには二度と手を出さないのが普通だ。
最適な模倣品対策を行なうことは、のれんを守るためであり、ひいては商いを守るためなのだ。ブランド価値経営の実践は、大きな企業・経営戦略のひとつだ。


くり返しになるが、日本企業がのれんを大事に商いをしていない、というつもりはない。また、このインターブランド社の世界ブランドランキング企業に選ばれることがすべてというわけでもない。
ただ、特に上位企業と自社を比較し、ブランド価値経営において何が欠けているのか、検討してみることは一考に値しよう。現代の経営にとって最重要ともいえる経営要素たる「革新性」や「意思決定の早さ」などは、どうだろうか。


一朝一夕にブランド価値が増加することはないが、様々な経営要素を見直し、その最適化をはかっていくことで、しっかりとのれんを守り、商いを守る、我が国の世界的好感度ブランド企業が増えていくことを願ってやまない。

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

【10月24日/東京】第2回 JAPAN LEGAL TECHNOLOGY CONFERENCE リ ー ガ ル テック 展 2 0 1 4

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第2回JAPAN LEGAL TECHNOLOGY CONFERENCE
リ ー ガ ル テック 展 2 0 1 4

<世界最先端のリーガル・テクノロジーと専門家が集う国際カンファレンス>

■国内外の弁護士や企業の法務部門・知財部門等の方々を対象に、今後、日本が真の知財立国となるために、国際訴訟やカルテル等のグローバルな問題にいかに対処していくべきかについて各分野の専門家にご講演頂きます。

■また、リーガルトピックのみならず、リーガル分野で活用される最新のリーガル・テクノロジーについても紹介をさせて頂きます。新たな出会いと発見をもたらす場所にぜひお越し頂ければ幸いです。

■日英同時通訳つきです。
◆基調講演『日本の歩むべき道』
登壇者 小泉 純一郎 氏 元内閣総理大臣

◆リーガルテックによる国際訴訟支援
登壇者 佐々木 隆仁 氏 AOSリーガルテック株式会社 代表取締役社長

◆知財視点の経営戦略
欧米の動向と日本企業の取るべき戦略
登壇者 加藤 幹之 氏 インテレクチュアル・ベンチャーズ社 上級副社長(EVP)兼 日本総代表

◆Maximizing the Value of Your IP Portfolio
登壇者 Louise C. Stoupe(ルイーズ・ストゥープ) 氏
モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所 外国法事務弁護士

◆Legal Technology Strategies to Reduce Costs and Win Cases
コスト削減とケースに勝つためのリーガル技術戦略
登壇者 David M Sannar(デイヴィッド・M・サナー) 氏
合同会社日本カタリスト マネージング・ダイレクター

◆国際カルテルが会社を滅ぼす
~日本企業の取るべき対応策~
登壇者 井上 朗 氏
ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)パートナー

●懇親会/プレミアムワイン会 (18:15~)

【日 時】2014年10月24日(金)
10:00~17:50(受付開始9:30)

【会 場】 虎ノ門ヒルズフォーラム 東京都港区虎ノ門1-23-4
【アクセス】
● 銀座線「虎ノ門駅」2番出口より徒歩約5分
● 日比谷線「神谷町駅」3番出口より徒歩約6分
● 千代田線・丸ノ内線・日比谷線「霞ヶ関駅」A12番出口より徒歩約8分

【主 催】 AOSリーガルテック株式会社
レクシスネクシス・ジャパン株式会社
【対象者】 弁護士(日本国及び海外)、民間企業の経営層、法務・知財・情報システム・監査部門の方
【定 員】300名
【参加費】 当日1万円 。ただし10月17日までにお申し込み頂いた方、もしくはご招待状をお持ちの方は無料でご入場いただけます 。

【お申込】 http://www.lexisnexis.co.jp/seminar
     レクシスネクシス セミナー 検索
【お問合先】 TEL:03-5561-3551 E-mail:seminar@lexisnexis.co.jp
【後 援】 合同会社日本カタリスト

【10/25東京・無料セミナー】企業におけるブランド&デザイン管理・活用術

企業におけるブランド&デザイン管理・活用術
~日経デザイン編集長、専門家らが講演~

【主催】 株式会社テクノアソシエーツ
協力 日経デザイン、K.I.T. (金沢工業大学)虎ノ門大学院、一般社団法人知的財産教育協会
【日時】 2014年10月25日(土)13:00~16:45(開場:12:30)
【会場】 K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院
   (東京都港区愛宕1-3-4 愛宕東洋ビル13階)
【定員】 80名(※定員になり次第締切)
【受講料】 無料
【申込サイト】
https://technoassociates.smartseminar.jp/public/application /add/249
【本セミナーの案内サイト】
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/seminar/20141025.html

食の輸出倍増、“オールジャパンブランド”で達成せよ!

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TPP交渉の先を見据えて政府が手掛ける戦略に、農水産物・食品の輸出倍増計画がある。2012年の輸出額が約4500億円。これを2020年には1兆円規模に拡大しようというものだ。
無論、従来のやり方を大きく変えていかなければならない。その一つに、オールジャパン体制化がある。

これまでは、それぞれ輸出意欲のある事業者に、まずは輸出機会を提供することがサポートの中心であった。
特別に重点品目や重点輸出国を定めることもなかった。
そのため、産地単位で輸出がしやすく、商流が確保されている国や地域に輸出が集中する傾向があり、中には、現地でそれら産地間での過当競争が発生し、たたき売りすら行なわれているという。まるで、かつての我が国家電業界を見るようだ。

政府はこうした状況を踏まえ、重点品目や重点国の設定を行なうこと、各県等でのバラバラな取組から地域単位に、更にはオールジャパン体制の下で積極輸出をはかる方針を示した。
輸出促進に欠かせない情報提供や見本市出展・商談会開催などのサポート(輸出総合サポート事業)はジェトロ一本に絞りワンストップサービスを実現するとともに、SOPEXA(フランス食品振興会)やUSMEF(米国食肉輸出連合会)などを参考として、品目別の輸出促進のための指令塔となり、また積極的にマーケティング活動を展開する団体を育成・支援するという。

このような政府施策に呼応する活動例のひとつとして挙げられるのが、冒頭の国産品和牛肉の輸出に用いられる「WAGYU/JAPANESE BEEF」ブランドだ。

このロゴマークは公益社団法人 中央畜産会が制定した「和牛統一マーク」である。
和牛品種である黒毛和種、褐毛和種、日本短角種および無角和種のいずれか、あるいはそれらの交雑種のみの食肉牛であり、日本国内で出生・飼育され、トレーサビリティが保証されているもののみに使用できる。
中央畜産会が定めたその他の条件を満たす申込書を同会に提出し、審査の上、許可された事業者に無償で商標の使用許諾がなされる。

2007年の制定以来、そうした個別の事業主のもとで使用されてきた一種の品質保証目的マークであるが、今年、口蹄疫問題後禁止されていた我が国からヨーロッパへの牛食肉輸出が再開されることとなり、これを機に「和牛はニッポン!」を売り込むべく、この「和牛統一マーク」をJA全農や食肉輸出業者など30社で使用していこうということになった。

ご存知のように「和牛」は日本だけで食されているわけではない。
米国産やオーストラリア産などが「WAGYU」として認知され、広く世界各所で楽しまれているのだ。私もかつてオーストラリアのシドニーで現地産「WAGYU」のステーキを頂き、大変に美味しかった記憶がある。
ただ、神戸牛に代表される、口に含むとスッととろけてしまうような霜降りの「和牛」は、それら外国産「WAGYU」と比して、味も値段も別格だ。

これまで「宮崎牛」や「佐賀牛」など、それぞれの産地ブランドで、バラバラに売り込みをしてきたため、 海外の消費者には日本産であることがうまく伝わってこなかったという。クールジャパンとして、食を含めた日本の文化に世界が注目しているという追い風にのり、“オールジャパンブランド”で外国産WAGYUとの差別化をはかるこの試み、私は大いに期待している。

しかし、この“オールジャパンブランド”による売り込みの政府方針、現場では少しばかり戸惑いの声も上がっているようだ。
たとえば、以前このWEBでもご紹介した水稲品種「つや姫」を擁する山形県。
パッケージなどに付する特徴的な図形を配したロゴマークを産品ブランドとしてアジア諸国に商標登録し、厳重な品質管理のもと、他県品との差別化をはかってきた実績を有する同県としては、「『日本産』と一括りにされてしまったら、たまらない」と警戒感を深める。
「青森リンゴ」ブランドの青森県も、同様の悩みをもつとする。オールジャパン体制のもと、そうした内なる差別化をどうはかるか。全体を俯瞰しながら個別案件についてきちんと交通整理ができるプロデューサー、あるいはコーディネーター的人材が、この食の世界に潤沢に存在するのか気にかかる。

そしてもう一点。この輸出倍増計画は輸出額、即ち売上規模だけを示すものだが、大事なのは「利益率」だということ。
かつて“メードインジャパン”ブランドで世界の工業品分野を席巻した我が国だったが、特に家電では、日本企業同士の激烈な価格競争の結果、世界への輸出額は大いに伸びたものの、これ以上は下げられないほどに利益率が低下し、疲弊してしまった。

日本の農業・農家のサバイバル戦略に資するための事業計画なのだから、利益率はしっかり確保すること。間違っても家電の二の舞だけは避けて欲しいと心から願う。

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

今日は、ネーミング・ライツ~施設命名権~について語ろう

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れも知的財産権の一つに数えられるものとして、「施設命名権」がある。運動場など公共その他の施設において、関心ある企業にスポンサーになってもらい、反対給付として、その社名やブランドを施設名称に冠することを認める権利だ。

ネーミング・ライツともいい、1970年代の米国が発祥の地である。わが国では、2003年の公共施設サッカー競技場・東京スタジアムに対する「味の素スタジアム」が、このネーミング・ライツ・システム適用の初事例であるといわれている。

直近では、自動車メーカーのマツダが、小田原市から箱根町を通り湯河原町に抜ける全長約16kmの観光有料道路「箱根ターンパイク」の命名権を得たとの話題がある。この8月1日から「マツダ ターンパイク箱根」という名称になるそうだ。

マツダとしては「“SKYACTIV技術”によって“走る歓び”と“優れた環境・安全性能”を提供するマツダと、富士山を望む美しい自然環境の中で快適で安全な観光コースを提供する箱根ターンパイクの“全てのお客さまに心ときめくドライビングを体感していただきたい”という想いが一致」したことが、このネーミング・ライツ取得に対する動機だったという。

年間2000万人の旅行客が訪れる箱根、この有料道路も一日平均3000台が通行するそうだ。観光パンフレットその他、あちこちに露出する「マツダ ターンパイク箱根」の名称。同社の更なる認知度・好感度向上に一役買うことだろう。

ネーミング・ライツは、一定期間の冠スポンサー名称権であるのが普通だ。
たとえば、日韓サッカーW杯の舞台となった横浜国際総合競技場は2005年から「日産スタジアム」の名称となり、契約期間は5年で現在その2期目に入っている。ちなみに最初の5年間の契約金は23億5千万円とのことであった。

これに対し、(現在運用されているようなネーミング・ライツ・システムとは様相を異にするが)無償で、半永久的に命名権を得ている企業がある。百貨店の老舗「日本橋三越本店」で、施設はご存じ東京メトロ銀座線「三越前」駅だ。

実は、無償というのはやや言い過ぎで、1930年代初頭に三越は東京地下鉄道(後の東京メトロ)に対し、全額資金負担をしてこの駅は作られた。駅自体が百貨店への巨大なエントランスという、三越前と呼ぶにふさわしい豪奢な地下駅舎。どれだけのお金が必要だったか、私には想像もつかない。
ただ、上野広小路の松坂屋や、日本橋の高島屋、白木屋(後の東急百貨店)、銀座の松屋など、地下鉄沿線に強力なライバルがひしめく中、この「三越前駅」戦略は大いに当たったようだ。

集客力で優位に立ち、巨額ながらもそうした先行投資をどんどん回収する一方、観光ガイドや手帳などの地下鉄路線図を見れば必ず「三越」の文字が目に触れる、そうした大量の宣伝広告媒体を、三越はその名を売り込む(露出させる)ため、この約80年の間、無償で利用出来たことになるわけだ。

もっとも、駅名に対し、個人や法人の名前や名称が使用されることが必ずしも良いとは限らない場合もある。
赤穂四十七士が眠る有名な泉岳寺。赤穂浪士に心を寄せる人達は今なお多く、墓参客にとり分かり易くて良かろうと最寄り駅名に都営地下鉄が「泉岳寺」駅と名付けたのは1968年。
それから四半世紀後の1993年、泉岳寺は東京都を不正競争防止法2条1項の1(周知の商品等表示の保護)違反などで訴えた。

報道によれば、当初はあまり問題なかったのかもしれないが、次第に寺に対し勘違いで駅関連の問い合わせをしてくる者(列車の運行状況や忘れ物など)が増え迷惑しているとか、不動産業者がまるで地名のごとく「泉岳寺マンション」のような建物名称を以て分譲マンションを販売するケースが増え、それらがすべて寺の行為と混同されかねないといった切実な理由が背景にはあるようだった。

事件は最高裁まで争われたが、結果は、泉岳寺側の敗訴に終わった。不競法を適用するための混同要件を満たさない(一般的に寺が地下鉄事業を営むことはなく、泉岳寺という駅名をもって、それが、宗教法人としての泉岳寺の経営にかかるごとき混同を生ずることはない)との理由だ。

上記泉岳寺のケースは、その駅名への「泉岳寺」名称の採択・使用が、現代のネーミング・ライツ・システムの下で泉岳寺側が積極的に望んでのことではない(あるいは三越のような戦略性もない)話だったことに注意を要する。
泉岳寺としては、こうなることが分かっていれば、都営地下鉄側が駅名を採択する際に、徹底的に反対運動を起こしただろうし、それは実っていたかもしれない。

ちなみに東京ディズニーリゾートの最寄り駅たるJR京葉線・舞浜駅は、当初、「東京ディズニーランド前」のごとき名称が検討されたが、ディズニー側の猛烈な反対にあい、地名である「舞浜」に落ち着いたと聞いている。ブランドは決して第三者の手に委ねない(一人歩きさせない)同社のポリシーによるものだろう。

ネーミング・ライツについては、もう一つ興味深い話があった。

鎌倉の銘菓「鳩サブレー」の豊島屋が、由比ガ浜・材木座・腰越の各海岸の命名権を鎌倉市から期間10年、1200万円/年で得た。そこで豊島屋はそれぞれを「鳩サブレー海岸」などにするかと思いきや、同社は、改めて海岸名を一般公募、結果として最も意見の多かった「そのままにする」ことにしたのだ(由比ガ浜は「由比ガ浜海水浴場」、材木座は「材木座海水浴場」、腰越は「腰越海水浴場」)。

豊島屋さんには恐縮だが、由比ヶ浜がもし「鳩サブレー海岸」になってしまったら、もう本当に興ざめだ。更にいえば、豊島屋さん以外の企業が命名権を得たとして、もっとへんちくりんな海岸名称になってしまったことも考えられる。

命名権を得て、しかし、市民が望む名称を保存するという粋なはからいをした豊島屋。名称自体の露出はないものの豊島屋の好感度は相当にアップしたし、きっと、由比ヶ浜などを訪れた観光客たちに「これはあの鳩サプレーの豊島屋が守った名称」として語り継がれるのだろう。

ネーミング・ライツ、意外に奥の深いものである。

※画像は歌川広重『由比ヶ濱』。

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

地理的表示の保護法が成立!

日刊知財新聞

林水産物や飲食料品などを特定の品質管理のもとでブランド産品化し、これを保護する法律「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(いわゆる「地理的表示法」)が、18日、参議院本会議において賛成可決され、成立した。1年以内に施行される。

なお、「地理的表示」については、こちらを参照。

【日本大学 平成26年度 大学院知的財産研究科 公開講座のご案内】

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【日本大学 平成26年度 大学院知的財産研究科 公開講座】

<テーマ>
 ●「求められる中小・ベンチャー企業への知財支援について」
  講 師:日本弁理士会会長 古谷国際特許事務所所長 古谷史旺氏

 ●「日本の不正競争防止法における営業秘密の保護の強化と日米欧中の比較について」
  講 師:日本大学大学院知的財産研究科 客員教授 棚橋祐治氏

  日 時:2014年7月25日(金)午後4時20分~午後6時50分
  場 所:日本大学法学部10号館1階1011講堂

<詳細・お申し込み>
http://www.law.nihon-u.ac.jp/contact/property/index.html

※画像は日本大学法学部WEBサイトより

グローバルスタンダードのつくりかた 〜VHSに見る栄枯盛衰〜

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益社団法人発明協会が「戦後イノベーション100選」の作業を進めており、このほど第一回発表として、38のイノベーションを選出した。

内視鏡やインスタントラーメン、新幹線などが並ぶ中、残念ながら「VHSビデオ」、今回は選にもれてしまったようだ。
私としては、知財ライセンス・ビジネスなどで深い関わりをもった技術であり、世界を席巻した家庭用ビデオの雄だから、是非、100選の中に選ばれて欲しいと願いつつ、今日は、このVHSビデオについて私なりの視点で少々お話をしたいと思う。
記憶を頼りの記述ゆえ、正確性を欠く部分もあるかもしれないが、予めご了承を賜りたい。

VHSビデオの開発メーカーは、日本ビクター株式会社だ。
同社は、「犬のマーク」で知られた昭和2年設立の音響映像機器・ソフト企業であった。

米国グラモフォン社(後のRCA)の全額出資による当時では珍しい外資系企業の誕生で、最初は蓄音機とレコードの輸入を、しばらくしてから技術移転を受けて国内工場でそれらを製造販売するようになった。蓄音機は、家一軒分もする高額かつハイカラな商品だ。今でいえばフェラーリのような超高級外車を扱っていたようなものだ。
営業マン達も、高所得層のみを相手にするため、気圧されぬよう、現在の金額で換算すると100万円ほどにもなる現金を懐に忍ばせ、営業していたという話を伝え聞いたことがある。

その後、第二次世界大戦を経て外資は撤退。不幸にして工場が空襲で壊滅してしまったため、戦後、事業継続そのものが危ぶまれたが、当時の日産、東芝に続き、松下幸之助氏率いる松下電器産業(株)の資本傘下に入り、徐々に再建が進んでいった。
太平洋戦争の直前まで対米交渉を行った駐米大使の野村吉三郎氏が社長に、「テレビの父」といわれた高柳健次郎氏と「Mr. VHS」の高野静雄氏が副社長を務めた会社でもある。1976年に初号機が発売されたVHSビデオの全盛期(約二十数年前)には、売上高6,000億円超、経常利益400億円超の、家電・AV機器業界におけるリーディングカンパニーであった。

ところで、ビクターにおけるVHSビデオの成功を語る前に、なぜ、日本自体が家庭用ビデオで世界を席巻できたのか簡単に述べたい。
この点を正面から研究した資料は極めて少ないが、私見では、

①1950~60年代、米国ではアンペックスが放送用ビデオの分野で世界的に突出していたものの、「家庭用」に切り込めるリソース(技術、財務投資etc.)が足りなかったこと、もう一方の雄、RCAは家庭用としては「絵のでるレコード」(“CED”と称した)にドメインを変えたこと、
②日本は家電メーカーとして「家庭用」分野の開拓に情熱を注いだこと、「小型化・低価格化」がお家芸であったし、VHSやBetaの前身たるU-マチック規格を含め、そのための技術を蓄えていたこと、
③欧州はフィリップスを中心に家庭用ビデオの独自開発を行なってはいたものの、同社は、むしろ“その先”を考えデジタル記録分野に特化集中していったのであろうこと(1975年Beta、1976年VHSに対し、1982年にはソニーとの連携で「CD」の初号機を市場投入している)
が挙げられるかと考える。

まさに日本の得意とする技術が活かせる分野が、ほぼ「更地で」残っていたという幸運に恵まれたとの言い方もできなくはない。もっとも、その「開墾」のために、先達がどれだけの努力を払ったかは言うに及ばない。

さて、VHSビデオを語る上で欠かせないのが、ソニーBetaとの家庭用ビデオ規格戦争である。1975年にソニー・ベータマックスSL-6300、翌年の1976年にビクターHR-3300が初号機として発売されるが、以後、10年に渡り熾烈な覇権争いが続いた。

VHS・Betaともに、いわゆるデファクト世界標準規格化を目指した。勝者が市場を総取りする世界である。最終的にこれを制したのがVHS規格だった。何が勝敗を分けたのかについては多数の説が存在する。個人的に要因を分析すると、

①規格支持者(当時「陣営」ないし「ファミリー」と称した)がビクターに、より多くついたこと。その要因として、ソニーはBeta陣営で常にトップシェアに固執したが、ビクターは時として自社ブランド商品の製造を控えてまで他社へのOEM供給に腐心しており、各社から信頼を得たこと(逆説的ではあるが「独り勝ちしない」好ましい相手に映ったのではないか)、

②その結果、「ビデオ再生機器普及」というインフラ醸成において次第にVHS規格優勢となり、ハリウッド大手スタジオがレンタル・セルスルー録画済みカセットをVHSに統一していったことなどが、主要な理由と考える。テープとヘッドの相対速度はBetaがVHSに勝り高画質であったし、テープが常にヘッドと一体にあるU-ローディング方式で、早送り・巻き戻し等の動作にもたつきがないなど、技術的にはBetaが優位であったとの評価が一般的だったが、誠に標準化の世界は難しいもので、単に優れた技術があれば勝てるわけではないことを象徴する一例となった。


ちなみに当時、VHS規格に関連する特許は3社(ビクター・松下・ソニー)が保有し、約30件あったといわれている。当該3社は、VHS・Beta規格の前身たるU-マチック規格時代にクロスライセンス関係を結んだ。ちなみにビクターの所有する特許として主要なものは次のとおりだった。

①特許1075646 号 (特告昭53-009928)「カラー映像信号記録方式」
②特許1041073 号 (特公昭55-032273)「PAL方式カラー映像信号記録再生方式」
③実用新案登録第1443144号 (実公昭55-40618)「磁気テープカセット(光検知)」

1980年代半ば、それまでビクターおよび「VHSファミリー(パナソニック、日立、三菱電機、シャープ、赤井電機)」各社からOEM供給を受けていた国内外企業がVHSビデオレコーダーの自社生産を希望するようになり、また、VHSビデオレコーダーに使用されるビデオカセットテープの旺盛な需要を支えるため、ビクターは、知的財産のオープン・ライセンス戦略に踏み切った。最終的には200社を超えるVHSレコーダー及びカセットのライセンシーによって、VHSビデオシステムの世界的市場拡大が進んだ。

VHSビデオシステム規格の知財オープン・ライセンス化は、ビクターの経営に大いに貢献した。ライセンス開始当初から年間100億円超のライセンス収入が同社にもたらされた。
約20年間での総額は2,500億円にのぼるものと推測される。ビクターもある程度の大手ではあったが、これをはるかに上回る超大手家電各社と比べればその規模の差は歴然であり、コスト力では到底太刀打ちできない。
映像記録技術に強みを持つ一部の大手とはクロスライセンスにより製造原価に特許実施料を乗せる必要をなくし、他方、それほどの強みを持たないか、全くない企業からはライセンス料が一方的に入ってくることから、これを製造原価の低減に大いに役立たせることができた。

更に次の研究開発投資の原資にもなった。かくしてビクターは、他社に対して価格競争力の面でもひけをとることなく、市場でもまずまずのシェアを占め、相当の年月、世界的なビデオ産業界の雄として君臨することができたのである。

そしてVHS規格は常に進化していた。
ビデオカメラ用のコンパクトサイズでありながら、アダブターを使えばスタンダードVHSカセットと互換のとれるVHS-C規格、高音質化したVHS-HiFi規格、高画質化のS-VHS規格、アナログハイビジョン向けW-VHS規格、そして世界初のデジタルHDフルハイビジョン映像記録が可能となったD-VHS規格。これら新規格の追加により、家庭用ビデオ分野における覇権を維持し、トータルとしてVHSビデオシステム規格ライセンスをも延命させた。

しかしながら、パラダイムシフトは起こる。D-VHS規格の真の競争相手は次世代DVDと称されたHD DVD規格あるいはBD規格のはずであったが、画質で劣るDVD規格の前にあっさり敗れた。時代は「テープ」でなく、より使い勝手の良い「ディスク」を求めたのである。
また、ビクターのビデオ事業はライセンス収入を加えてもなお営業赤字に抗えない状態にまで衰退していた。家電の世界に特有の激烈な価格競争の結果である。標準化の世界では「昨日の勝者は今日の敗者」という言葉を良く耳にする。栄枯盛衰、残念ながらビクターは、2011年10月、JVCケンウッド(株)に吸収合併され、84年の歴史を閉じた。

最後は少々、湿っぽい話になってしまい恐縮である(きっと、私の思い入れが強すぎるためだろう)。
VHSビデオがビクターの経営に与えた功罪のうち、特に“罪”については深く考えてみる必要があるだろう。当時、一部のマスコミからは「VHS一本足経営の危うさ」を強く指摘されてもいた。

ただ、何も技術に罪があるわけではない。NHKの人気番組だった“プロジェクトX”では、『窓際族が世界規格を作った』として放送され高い視聴率を獲得し、『陽はまた昇る』と題した映画にもなったVHSビデオ。純粋に、長く記憶に残る我が国発のイノベーションとして、是非100選の仲間に加えて頂きたいものだ。

※画像はWIKIPEDIAより

松浦幸彦(まつうら ゆきひこ)/ 金沢工業大学大学院工学研究科知的創造システム専攻修了(工学修士)。日本ビクター(株)にて知的財産・企業法務分野の業務に従事、DVD技術規格及びロゴ商標のライセンス管理会社 DVD Format/Logo Licensing Corporationの取締役を経て、現在、同社顧問。業界活動では、DVD ForumにてFLAG(Format/Logo Advisory Group)副議長、(一社)電子情報技術産業協会で商標専門委員会委員長等を歴任。

「うどん県」香川に新たな発明!? その名は“かまたまソフト”

ウェブでも、しばしば登場する登録商標「うどん県」の香川。

廃棄麵を燃料として有効活用する発電機を発明する会社が現れるほど、うどんにこだわる同県に、また、新たな発明(?)が誕生した。

ソフトクリーム製造器を特別に改造し、まさにうどんが盛られているとしか思えないビジュアルのコーンタイプ・ソフトクリーム、“かまたまソフト”だ。

このソフトクリームは、金比羅宮のそばにある(株)にしきや「しょうゆ豆本舗×浪花堂餅店」が開発した。

食べ方もかなり奇抜。なんと、刻み葱に醤油をかけて食べるというのだ。

卵かけごはんのうどん版として知られる「かまたまうどん」の味わいになるらしい。怖いもの見たさ、も半分あるが、ちょっと試してみたい気がする(・・・かな?)。

(株)にしきやさんによる「かまたまソフト」の名称や製法など、知財権の出願状況は確認できていないが、大変ユニークなこの商品、類似品に悩まされることのないよう、万全な体制を敷いて頂きたいと、お節介ながら思う。

ところで、香川がうどんなら、信州はそば。こちらにも“そばソフトクリーム”が存在し、長野県下高井郡にある「手打蕎麦うどん玉川本店」で食べることができる。

ちなみに、こちらの御店主は、この“そばソフトクリーム”について特許を得ていた(第2781803号)。

まるでソフトクリームのレシピ集のようであり、また御店主のそばにかける心意気が伝わってきそうな明細書が、なかなか面白い。お時間があれば、ご一読を。

日本車初! ホンダ「スーパーカブ」が立体商標登録される

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ンダのオートバイ「スーパーカブ」が日本製の乗り物として初めて特許庁に立体商標登録されることになった。

1958年から世界160カ国以上で8700万台も販売されている、世界で最も生産された二輪車「スーパーカブ」。この名車がコカ・コーラの瓶などと同様に、形だけで製品を識別できると認められることとなる(国内のみ)。

自動車や二輪車はモデルチェンジが多いためデザインが立体商標として登録されにくく、「日本では輸入車のフェラーリが登録されているぐらい」(特許庁)とのことだ。

本田技研工業リリース

※画像はwikipediaより

【第1回 東京理科大学・MIPプロフェッショナル講座】6月5日 飯田橋

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【第1回 東京理科大学・MIPプロフェッショナル講座】
2014年6月5日 (無料セミナー)
「IT分野におけるグローバル特許紛争と日本企業の対応」(米ワシントン大学・竹中俊子教授)

【内容】
第1回「東京理科大学・MIPプロフェッショナル講座」のご案内です。米ワシントン大学ロースクールの竹中俊子教授が、Apple v. Samsung事件を中心に、標準必須特許及び製品の一部に係る特許の侵害に対する救済のあり方の国際比較を行ない、特許権者、被疑侵害者に有利な国際的フォーラムショッピングやトロール対策等の特許戦略について検討します。

【日時】
2014年6月5日(木)18:30~20:00

【会場】
東京理科大学MIP C1教室
東京都千代田区飯田橋4-25-1-12 セントラルプラザ2階
JR・地下鉄 飯田橋駅 徒歩1分
地図はこちら

【参加費】無料

【参加申込】
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【講師 略歴】
ワシントン大学ロースクール(シアトル)教授、同ロースクール先端知的財産研究所(CASRIP)所長、ニューヨーク州弁護士、日本国弁理士(現在は登録抹消)。
1981年成蹊大学法学部卒、日本テキサス・インスツルメンツ株式会社を経て、ワシントン大学ロースクールアジア法学LL.M.取得、同大学比較法博士号(Ph.D)取得。ワシントン大学ロースクール講師、助教授、准教授を経て、2003年ワシントン大学ロースクール教授。
Intellectual Property Systems in Civil Law and Common Law (Toshiko Takenaka ed., Edward Elgar Publishing 2013)、紋谷暢男監修・ドナルド・チザム著・竹中俊子訳「米国特許法とその手続」(2000年雄松堂)、紋谷暢男監修・ジェラルド・パターソン著・竹中俊子訳「欧州特許法とその手続」(1995年 雄松堂)、竹中・山上監修 ワシントン大学CASRIP編「国際知的財産紛争処理の法律相談」始め著書・論文多数。

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